B:怒れる移動植物 マッドマゲイ
おうお前、メガマゲイって知ってっか?
アガベに似た移動性植物なんだが、やたらと攻撃的でよ、ギザギザの葉を鎌みたいにぶん回す、厄介な奴らさ。マッドマゲイってのは、そのなかでも特別な個体に付ける名だ。
普通のメガマゲイの寿命は数十年程度で、一生に一度だけ花を咲かせ、繁殖を終えると枯れるんだが……こいつの場合、花を咲かせたあとも生き残ってやがる。ただ生命力が強いだけじゃなく、凶暴性も増すらしくてな……被害者も多く、討伐対象に指定されてるのさ。
~ギルドシップの手配書より
https://gyazo.com/6f6ef624b0f90068eaaaed5d49e7d1b3
ショートショートエオルゼア冒険譚
男はパイナップルらしいフルーツを盛り付けた皿をテーブルに置くと、椅子に座って話し始めた。
「オルコ・パチャにすむペロペロ族は今でこそ行商やアルパカの放牧、お茶の栽培知られているが、過去にはこの過酷な環境に適応し、生活や生計を立てる為、様々な試行錯誤や涙ぐましい努力を重ねてきた。その一つがメガマゲイの栽培だ。メガマゲイはオルコ・パチャ原産の野生の固有種なのだが生物のように頭や胴、手足が分かれていて二足歩行で歩きまわる植物でサボテンダー類と同じ、いわゆる移動植物と呼ばれている種なのだ。しかも意外と凶暴な性質を持っていて、生物の「手」に当たる部分が鋭いトゲトゲの葉になっているのだが、相手が自分を害するものと看做すや否やそのトゲトゲの葉を振り回して戦ったりもする。なんでまたペロペロ族がこのメガマゲイを栽培しようと考えたかと言うと、メガマゲイの頭部を見れば分かりやすいのだがメガマゲイはパイナップルに属する植物なのだ。つまり食べると旨い。」
男はそういうと先程からあたし達が次々と口に運んでいるフルーツの皿に視線を落とした。
「え……、これ…?」
普通にパイナップルだと思っていたあたしは口元まで運んでいた分を黙って皿に戻した。
「しかも、ワチュン・ペロ周辺が原産の野生種なので環境に適応させる為の品種改良の必要もない。当時、これを商機と頭の算盤で考えたペロペロ族はメガマゲイを栽培し、収穫して行商で売りさばくことを考えたのだ。結論から言えば失敗だった。そもそも一体であっても危険な相手なのに商売になるほど大量のメガマゲイを管理するのは熟練の戦士でも難しい。じゃあ、その都度狩れば良いのでは?とのアイデアもあったようだが、それでは安定した供給が望めない。ペロペロ族は何か方法が無いかを色々と模索したようだが断念した。だが、その模索する中でとんでもない失敗を犯す。公式には報告されていないとんでもない失敗だ。狩で安定供給できない理由の一つがメガマゲイの繁殖にある。通常、メガマゲイは10年前後の一生の中で一度だけ花を咲かせ繁殖を行い、それが終わると枯れてしまう。だが、何度も繁殖可能ならその数も増え安定供給できると考えた大馬鹿者がいた。実はその試作個体がマッドマゲイなのだ。品種改良の結果マッドマゲイは普通の個体よりも大きな体を持ち、常にを繁殖行動を行うことが出来ることは確認されたのだが、同時に自分以外の遺伝子を持つ存在を根絶させようとする行動も確認、さらにその破壊衝動はメガマゲイ以外の生物にも向くらしくペルペル族にも多くの人的被害をもたらした」
「つまりそのマッドマゲイを駆除して欲しいって事でいい?」
あたしがそう総括すると、男は黙って頷いた。